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メカニカルパワーについて、再び

Article

Author: Giorgio A. Iotti、Jean-Pierre Revelly

Date of first publication: 30.08.2023

ある最近の論文において、メカニカルパワー(MP)を用いた人工呼吸器誘発肺傷害(VILI)リスクの実用的評価に関するいくつかの重要な興味深い所見が発表されました。 

メカニカルパワーについて、再び

John Mariniと共著者らによる、MPとVILIの関係の概念モデルを扱った論文(Marini JJ, Thornton LT, Rocco PRM, Gattinoni L, Crooke PS. Practical assessment of risk of VILI from ventilating power: a conceptual model. Crit Care. 2023;27(1):157.Published 2023 Apr 20. doi:10.1186/s13054-023-04406-91)は、MPという比較的新しい概念がどのようにして次第により明確で確立された形を成しつつあるかを示しています。この論文で提示された所見は、次の点で特に意味を持ちます。そこでは、MPの概念の考案者たち(Luciano Gattinoniが共著者に名を連ねています)が、初期の概念に対して自己批判を含む重要な改良を加え、弾性エネルギーと抵抗エネルギーの比較、肺傷害を防ぐ閾値圧力の概念、呼吸回数の役割、呼気終末陽圧(PEEP)の役割について論じています。また、新たな用語もいくつか提案しています。

弾性エネルギーと総エネルギーの比較

前回のニュースレターで説明したように、MPは、各拡張に関連するエネルギー×1分間の呼吸回数に相当します。そして、1回の呼吸に対応する総エネルギーは、抵抗エネルギーと弾性エネルギーに分けられます。ここで著者らは、弾性エネルギーだけが、動的条件下の肺を傷害する可能性を持つ伸張および歪みと強い相関関係を持つことを踏まえ、抵抗エネルギーを除外して弾性エネルギーに的を絞っています。弾性エネルギーのみに注目すると、VILIリスクの評価におけるMPの使用が大幅に簡単になります。その理由は、(総MPとは対照的に)弾性MPは換気モード(ボリュームコントロールまたはプレッシャーコントロール)にほとんど左右されず、受動的換気中に単純な測定値から計算できるためです。抵抗エネルギーを無視することは、総MPの評価方法に関する科学的議論に終止符を打つ可能性もあります(Buiteman-Kruizinga LA, Schultz MJ. The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation. Respir Care. 2023;68(4):556. doi:10.4187/respcare.105312​, Baedorf-Kassis EN, Brenes Bastos A, Schaefer MS, et al. Response to: The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation. Respir Care. 2023;68(4):557-558. doi:10.4187/respcare.109463)。簡単に言えば、弾性MP(その計算方法は明確です)のみが、肺傷害にとって生理学的に重要とみなされています。

次に、2種類の異なる弾性エネルギーが検討されています(図1を参照)。「ドライビングエネルギー」は、一回換気量(VT)を生成するためにPEEPに加えて適用されるドライビングプレッシャー(DP)に関連し、「総弾性エネルギー」は、VTを生成するために適用される大気圧を超えるゲージ圧力(すなわち、プラトー圧:Pplat = DP + PEEP)に関連します。これら両方のタイプの弾性エネルギーを考慮に入れると、PEEPをMPの計算に算入すべきかどうかについての科学的議論が収まります(Camporota L, Busana M, Marini JJ, Gattinoni L. The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or Four Steps Backward?. Am J Respir Crit Care Med. 2021;204(4):491-492. doi:10.1164/rccm.202104-0923LE4​, Costa ELV, Slutsky AS, Amato MBP. Reply to Camporota et al.: The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or 4 Steps Backward?. Am J Respir Crit Care Med.2021;204(4):492-493. doi:10.1164/rccm.202105-1113LE5)。

肺傷害の閾値圧力とは

最後に、Mariniは、DPとPplatの両方について、肺の機械的傷害の閾値圧力(Pt)を検討することを提言しています。下の図2は、Ptより低い弾性圧力で換気が管理されているケースを表します。この場合、VILIの理論上のリスクはゼロです。このケースでは、呼吸回数が多くても(かなり大きなドライビングMPと総弾性MPを伴うものの)VILIのリスクは上昇しません。図3では、吸気ピーク時の弾性圧力がPtをわずかに超えています。したがって、これに伴うVILIの軽度のリスクが、呼吸回数の増加によって増幅されます。図4の例では、結果は他のケースよりはるかに悪く、呼吸回数の増加はVILIのリスクに大きく寄与します。 

総弾性エネルギーとドライビングエネルギーの面積を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図1
総弾性エネルギーとドライビングエネルギーの面積を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図1
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図2
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図2
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図3
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図3
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図4
弾性圧力の面積と閾値圧力を示す、一回換気量に対して圧力をプロットしたグラフ
図4

PEEPの役割

PEEPレベルは呼吸あたりの総弾性エネルギーに(したがって総弾性MPにも)直接影響しますが、PEEPの選択は通常、結果的なMP以外の基準(ガス交換や血行動態など)に基づきます。その一方で、PEEPに加えて生成される呼吸は、Ptを超えないように設定する必要があります。Ptについては、現在肺保護のために推奨されている2つの数値、すなわち最大DP = 15 cmH2Oと最大Pplat = 30 cmH2Oを組み合わせることで、大まかに選択できます。

両方の基準を満たすため、たとえばPEEPが12 cmH2Oの場合、Pplatは12 + 15 = 27 cmH2Oを超えないようにします。PEEPが15の場合、最大Pplatは15 + 15 = 30 cmH2Oにします。PEEPが18の場合は、最大Pplatが30 cmH2Oを超えないようにするため、DPは30 – 18 = 12 cmH2Oより小さくします。これらの条件の下では、理論上、呼吸回数は動脈PCO2とpHを制御するために必要な任意の回数まで増やすことができます。これにより、肺傷害のリスクが増加することはありません。

ただし、何らかの理由でPtを超える弾性圧力で換気せざるを得ない場合、肺傷害を最小限に抑えながらCO2除去効率を最大限に高める換気パターンを見つけることは容易ではありません。原理的には、ASVまたはINTELLiVENT-ASVによる呼吸回数とVTの自動選択は、この目的に役立つ可能性があります。ただし、総弾性MPとドライビングMPの計算によって、実施中の換気に伴うリスクを評価できる必要があります。

実際的な制限

著者らは、提示したモデルの実際的な制限もないがしろにしていません。最大DP = 15 cmH2Oと最大Pplat = 30 cmH2Oに基づくPtの使用は、一般的なアプローチにすぎません。患者によっては、あるいは呼吸器系の肺領域が異なる場合には、一般的なアプローチとは異なるPtを使用する方がより適切な場合があります。特に、(硬直した胸や重い胸の症例で見られるように)胸腔内圧が高い場合は、肺に対する保護効果があるため、通常より高いPtが許容されます。さらに、重力による胸腔内圧勾配も考慮に入れる必要があります。つまり、背臥位においては、Ptは上側肺領域では低くなりますが、高い胸腔内圧によって保護されている下側領域では高くなります。重力がPtに及ぼす効果は、腹臥位ではそれほど顕著ではありません。

人工呼吸と呼吸メカニクスの理解を深めるために継続的に貢献し、自身の優れた洞察を集中治療コミュニティに提供し続けるJohn Marini氏に心から感謝いたします。  

Practical assessment of risk of VILI from ventilating power: a conceptual model.

Marini JJ, Thornton LT, Rocco PRM, Gattinoni L, Crooke PS. Practical assessment of risk of VILI from ventilating power: a conceptual model. Crit Care. 2023;27(1):157. Published 2023 Apr 20. doi:10.1186/s13054-023-04406-9

At the bedside, assessing the risk of ventilator-induced lung injury (VILI) requires parameters readily measured by the clinician. For this purpose, driving pressure (DP) and end-inspiratory static 'plateau' pressure ([Formula: see text]) of the tidal cycle are unquestionably useful but lack key information relating to associated volume changes and cumulative strain. 'Mechanical power', a clinical term which incorporates all dissipated ('non-elastic') and conserved ('elastic') energy components of inflation, has drawn considerable interest as a comprehensive 'umbrella' variable that accounts for the influence of ventilating frequency per minute as well as the energy cost per tidal cycle. Yet, like the raw values of DP and [Formula: see text], the absolute levels of energy and power by themselves may not carry sufficiently precise information to guide safe ventilatory practice. In previous work we introduced the concept of 'damaging energy per cycle'. Here we describe how-if only in concept-the bedside clinician might gauge the theoretical hazard of delivered energy using easily observed static circuit pressures ([Formula: see text] and positive end expiratory pressure) and an estimate of the maximally tolerated (threshold) non-dissipated ('elastic') airway pressure that reflects the pressure component applied to the alveolar tissues. Because its core inputs are already in use and familiar in daily practice, the simplified mathematical model we propose here for damaging energy and power may promote deeper comprehension of the key factors in play to improve lung protective ventilation.

The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation.

Buiteman-Kruizinga LA, Schultz MJ. The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation. Respir Care. 2023;68(4):556. doi:10.4187/respcare.10531

Response to: The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation.

Baedorf-Kassis EN, Brenes Bastos A, Schaefer MS, et al. Response to: The (Mechanical) Power of (Automated) Ventilation. Respir Care. 2023;68(4):557-558. doi:10.4187/respcare.10946

The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or Four Steps Backward?

Camporota L, Busana M, Marini JJ, Gattinoni L. The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or Four Steps Backward?. Am J Respir Crit Care Med. 2021;204(4):491-492. doi:10.1164/rccm.202104-0923LE

Reply to Camporota et al.: The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or 4 Steps Backward?

Costa ELV, Slutsky AS, Amato MBP. Reply to Camporota et al.: The 4DPRR Index and Mechanical Power: A Step Ahead or 4 Steps Backward?. Am J Respir Crit Care Med. 2021;204(4):492-493. doi:10.1164/rccm.202105-1113LE